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ワインのヴィンテージと気候温暖化

1971年から2000年までの平均気温を平年値とし,各年の平年値からの差を棒グラフで示してあります.赤丸はヴィンテージの良年,青丸は不良年.

ワインは農産物とよく言われるように,生産量や質は気候と密接な関係があります.一般的に,ブドウの生育期間に天候の良かった年には長期保存可能な質の良いワインが出来,気温が低く雨の多い年は軽いワインが出来ます.ところで,近年温暖化が地球規模での環境問題とされていて,南極の氷河が解けて海面が上昇したり,砂漠が拡大したりなど様々な影響が指摘されていますが,どうやらワインの生産にも影響があるようです.
上の図は気象庁発表の1880年以降の地球規模での気温変化と,1900年以降のフランスワインのヴィンテージを重ね合わせたグラフです.気温のグラフは,1971年から2000年までの平均気温を平年値とし,各年の気温が平年値に比べどれだけ差があるかを示しています.ヴィンテージは赤丸が良年,青丸が不良年を表しています.フランスワインと言っても,ボルドーは良くてもブルゴーニュは不良の年もありますので(もちろんその逆もあります),ヴィンテージは全体的に良かった年,悪かった年と見てください.気温もワイン生産地域の資料と比べなければいけないのですが,手元に資料がないので地球全体で代表させています.
図を見ると,ヴィンテージの良い年は何年かに1回位の割合であります.詳しく見ると良年の多いのは1920年代と1980年代で5回あります.これに対し1910年代と1960年代は1回しかありません.気温の高かった年に良いヴィンテージのワインが生産されている傾向があります(偉大な1945年など)が,その逆(1929年など)もあり,必ずしもそうとも言い切れません.
悪いヴィンテージのワインは1900年から1930年代初めにかけてと1950年から1970年代にかけて生産されています.これらの期間は,地球の気温が低温傾向にあることがわかり,ワイン生産地でも天候に恵まれなかったようです.これに対し,1930年代半ばから1940年代にかけてと,1980年以降は気温が高めでヴィンテージの悪い年はほとんどありません.
以上のことから,気候温暖化は当面ワイン生産にはプラスにはたらき,私たちは美味しいワインを飲む機会が増えそうですが,地球全体を考えるとマイナス面も多く喜んでばかりもいられない,ということでしょうか.